住民税が高い安いは都市伝説
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最終更新日:2014/04/07
税務と会計
「あの町は住民税が安い」なんて事をよく耳にします。でもこれデマなんです。
今現在住民税は全国どこに住んでいても、一部の地域を除いて一律なんです。
神奈川県と愛知県と夕張市が超過税率をかけているので若干高いです。
あと平成22年に限定し愛知県半田市が減税しました。
今は名古屋市が減税を打ち出してますが、議会と対立して実現しておりません(2010.09現在)。
東京の府中は競馬場があるから安い?
よく東京の府中は競馬場があるから安いなんていうのがありましたが、それもデマですね。
でも、引越して「住民税が下がった」っていう話をする人が実施にいた、と思われた方。住民税は前年の所得を元に計算しているので、前年の所得が下がればその分下がるのでしょう。
こんな事は調べればスグにわかることですが、結構知らないんですね。しっかりと税金の事を勉強しよう、と僕も思います。
でも反対にこのデマが広まった経緯を考えてみたいと思います。
労働者の大半はサラリーマン
日本人の労働者の多くは給与所得者、いわゆるサラリーマンです。
サラリーマンが給与から支払の段階に前もって引かれるものの総称を「源泉徴収」と言います。いわゆる給与から天引きってやつです。
「泉の源(みなもと)」=「給与の出所」=「会社」の段階で先に徴収されるので、「源泉徴収」です。
具体的なものとして
・所得税(代表的なので一般にこれのことだけが源泉徴収と言われたりします)
・社会保険料(年金・医療保険・介護保険)
・雇用保険
・住民税(道府県民税・市町村民税)
その他、会社によっては、「退職金積立金」やら「組合費」などがある場合もありますが、これは会社独自のもので、公的な「源泉徴収」は以上のもので大体全部です。
同時に「源泉徴収」することが義務なものも以上です。
しかしその中で、「源泉徴収」必ずするものと、一部の会社でしないものものの2種類があります。
◆必ずするもの
・所得税
◆一部の会社でしないもの
・社会保険料(年金・医療保険)
・雇用保険
・住民税(道府県民税・市町村民税)
この違いはなんなのか?実は、「源泉徴収」しないのは法律違反だけど、実質的に罰則があるかないかの違いです。
社会保険未加入法人問題
少し話が住民税からそれますが、社会保険料、特に年金について見てみましょう。
年金には国民年金と厚生年金があります。(もうひとつは共済年金で公務員が加入しますので今回は無視)
国民年金は自営業者やフリーター等が加入しています。現在は一律で月額15,100円(2010.09)です。
厚生年金はサラリーマンが加入して、給与の高さに一定の割合をかけて計算されて、毎月「源泉徴収」されます。
さらに厚生年金の特徴はその同額を会社がプラスして、倍にして払ってくれます。
この会社がプラスしてというところがみそです。
具体的な金額は総支給額(源泉徴収前の金額)20万円の人は
社員負担約15,000円+会社負担約15,000円=総額約30,000円
結構な額です。というより、月収20万円の人でも、国民健康保険の人の倍を総額としては払っているんです。その分老後には国民年金よりはたくさん貰えます。
月収60万円の人は、個人5万会社5万位払います。
会社としては結構な負担ですよね?
そこで会社は社員には厚生年金に加入せず国民年金にして欲しいんです。
厚生年金の加入条件はフルタイムの3/4以上の時間勤務をしている社員全員です。これは法律に書いてあります。でも罰則が実質的に無いんです。(労働局の指導程度)
※追記:だいぶ取り締まられては来ておりますが、そもそも勤務時間については、言い逃れしやすいですし。
※追記:一応法律(健康保険法、厚生年金保険法)で、50万円以下の罰金か、6ヶ月以下の懲役という罰則がありますが、悪質性が高く無い限り、適応はされていないのが実情です。
これを「社会保険未加入問題」(厚生年金は、社会保険料(年金・医療保険)のセットの一部なので)と言ったりします。
実際に僕の知人は、「手取りが減っちゃうよ」という風に言われたので上記の説明も何も受けず、加入条件を満たしているのに国民年金に加入して毎月コンビニで納めています。
確かに、年金は将来破綻して、いくら貰えるかはわからないから今の手取りが増えたほうが良いという気持ちもわかりますが、それと法律を破る事は違うと思います。
こういう会社(本来社会保険に加入すべき社員を加入させていない会社)は結構あります。
正確な割合はわかりません。(わからないようにやってますし)
ただ感覚値として結構多いんだなと感じたことがありました。
うちの会社は小さいからだと思いますが、税理士の先生に「ちゃんと社会保険加入しててえらいね」と言われたほどです。結構あるな…
国民年金と厚生年金の自己負担感
で、この未加入問題もかなり問題だとは思います。
ただ、それと同時に僕が感じているのは、年金として支払う額が上がっているというのは良くニュースで見ますが、どれも国民年金の話題が多いことです。
ただ、国民年金よりも厚生年金の方がアップしてるんです。しれっと。これから(2010年から数えて)あと8年アップすることが既に決まっているんです。
でもニュースなどで見る具体的な数字は国民年金のほうを参照したものが多いんです。なぜでしょう?
国民年金は、フリーターや自営業の人が対象なので、多くは自分で納めているんです。(僕の知人もコンビニで現金で払ってました)
厚生年金は、サラリーマンなので「源泉徴収」されます。つまり払っている実感が無いんです。
支払っている実感があるもののほうがみんなの共感を生み、話題にのぼりやすいのです。
僕は2つ騙されていると思っています。
・源泉徴収は実感が少ないから段階的に上げてもバレないと国に騙されている
・でも会社は自分で収めているから実感があり、入れるべき年金に加入させないように会社に騙されている
住民税でも同じように自己負担感が違う
住民税に話を戻します。
住民税も源泉徴収は必須ですが、していない会社も多いです。
住民税の源泉徴収を特別徴収といい、反対に源泉徴収されずに自分で納める事を普通徴収と言います。
普通徴収だからといって、会社の負担が増えるわけではないですが、当然手間が増えます。ということは経理の人の人件費や事務費が会社にのしかかります。
これは結構馬鹿にならなくて、過去に源泉徴収をしなくて追徴課税(税金を払わないことへの罰金)を受けた会社が、税額計算を会社に強制しているって事は、国の本来の仕事(税額計算)を民間に委託しているわけだから、この人件費事務費等を国は負担すべきだと裁判を起こしたこともあるくらい、結構な手間なんです、これ。(この裁判は所得税の源泉徴収ですが)
だから、めんどくさいから普通徴収にして、社員に収めてねってしたい会社も多いことも想像できます。
ここまで聞くと、この関係は、国民年金(自分で納める=普通徴収=実感あり)と厚生年金(源泉徴収=特別徴収=実感なし)の関係に似ていますよね?
100%推測ですが、「あの町は住民税が安い」って言った人って、普通徴収=源泉徴収されない=自分で払ってるんじゃ無いかなと思います。
でもこれは一歩前進の騙され方じゃ無いでしょうか?だって調べればわかることを他人を鵜呑みにして騙されてるのはダメだけど、少なくとも金額に興味を持っているんですから。
このエントリーを見て、ひとりでも多くの方が明日、前の給与明細を見てくれることを望みます笑
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